資金繰り表は、いつ・いくら現金が足りなくなるかを事前に把握するための表です。難しい会計知識は必要なく、入金と支出を月ごとに並べるだけで作れます。この記事では、資金繰り表の項目立て、3か月先を読む手順、作ったあとの使い方までを具体的に解説します。
資金繰り表とは|損益計算書との違い
資金繰り表は「現金の動き」を管理する表です。利益が出ていても、入金より先に支出が来れば手元の現金は不足します。いわゆる黒字倒産はこの状態で起こります。
| 比較項目 | 損益計算書 | 資金繰り表 |
|---|---|---|
| 見るもの | 利益(もうけ) | 現金の残高 |
| 計上の基準 | 発生主義(売上が立った時点) | 現金主義(実際に入出金した時点) |
| 時間軸 | 過去の実績 | 未来の予測 |
| 減価償却費 | 費用として計上 | 現金が出ないので含めない |
| 借入金の元金返済 | 費用にならない | 現金が出るので計上する |
この表の下2行が特に重要です。減価償却費は現金が出ていかないので資金繰り表には入れず、借入金の元金返済は費用ではありませんが現金が出ていくので計上します。ここを取り違えると予測がずれます。
資金繰り表の基本構成
月ごとに縦に並べる形式が基本です。項目は次の5ブロックで考えると整理しやすくなります。
| ブロック | 項目例 |
|---|---|
| ① 前月繰越金 | 前月末の現金・預金残高 |
| ② 営業収入 | 現金売上、売掛金回収、決済代行からの入金、手形期日入金 |
| ③ 営業支出 | 仕入・外注費、人件費、家賃、水道光熱費、支払手数料、税金・社会保険料 |
| ④ 財務収支 | 借入金の入金、借入金の元金返済、利息の支払い、リース料 |
| ⑤ 翌月繰越金 | ① + ② − ③ + ④ の結果 |
⑤の翌月繰越金が、次の月の①になります。この数字がマイナスになる月が、資金がショートする月です。
3か月先を読む手順
手順1:直近3か月の実績を埋める
まず過去の数字から入れます。通帳の入出金明細を見ながら、実際に動いた金額を項目ごとに振り分けてください。ここで自社の「入金と支出のクセ」が見えてきます。
手順2:入金の予定を入れる
売上が立った月ではなく、実際に現金が入る月に入れるのが要点です。
- 売掛金:請求書の支払期日で入れる(末締め翌月末払いなら、当月の売上は翌月末)
- 決済代行の売上:締め日と支払日を確認し、入金される月に入れる
- 手形:期日の月に入れる
手順3:支出の予定を入れる
固定費は毎月同額で埋め、変動費は売上予測に連動させます。忘れやすいのが次の項目です。
- 賞与(支給月に大きく出る)
- 労働保険の年度更新、社会保険料の算定変更
- 法人税・消費税の納付月(消費税は中間納付にも注意)
- 固定資産税・自動車税
- 年払いの保険料・システム利用料
- 借入金の元金返済
手順4:繰越金を計算し、マイナスの月を探す
各月の翌月繰越金を計算します。マイナスになる月、または手元に残したい最低残高(一般に月商の1〜3か月分が目安とされます)を下回る月が、対処が必要な月です。
手順5:毎月更新する
資金繰り表は作って終わりではありません。月初に前月の実績を確定させ、先を1か月伸ばします。この更新を続けることで精度が上がります。
作成例|3か月先で不足が見える形
| 項目 | 4月 | 5月 | 6月 |
|---|---|---|---|
| ① 前月繰越金 | 300万 | 250万 | 180万 |
| ② 営業収入 | 500万 | 480万 | 450万 |
| ③ 営業支出 | 500万 | 500万 | 560万 |
| ④ 財務収支(元金返済等) | ▲50万 | ▲50万 | ▲50万 |
| ⑤ 翌月繰越金 | 250万 | 180万 | 20万 |
この例では、6月に賞与や納税が重なって支出が増え、繰越金が20万円まで落ち込みます。7月の支出を考えれば手当てが必要な水準です。この「気づき」を2〜3か月前に得られることが、資金繰り表の最大の価値です。
不足が見えたときの打ち手
| 時間の余裕 | 検討できる手段 | コストの傾向 |
|---|---|---|
| 3か月以上 | 日本政策金融公庫、制度融資、信用保証協会付き融資 | 低め |
| 1〜2か月 | 銀行融資、ビジネスローン | 中 |
| 数日〜2週間 | ビジネスローン(即日型)、ファクタリング | 高め |
| 並行して | 支払サイトの交渉、決済代行の入金サイクル見直し、固定費削減 | — |
時間があるほど選択肢が広く、コストの低い手段を選べます。資金繰り表を作る価値は、この「時間」を確保できる点にあります。
なお、ファクタリングは借入ではなく売掛金の売却で、発生するのは手数料です。融資は貸金業登録のある正規業者を選び、金利は利息制限法の範囲(元本10万円未満は年20%、10万円以上100万円未満は年18%、100万円以上は年15%)で確認してください。
資金繰り表を作るツール
- Excel・Googleスプレッドシート:自由度が高く、最初はこれで十分です。日本政策金融公庫や商工会議所がひな形を公開しています。
- 会計ソフトの資金繰り機能:実績が自動で反映されるため、更新の手間が減ります。
- 金融機関のフォーマット:融資を申し込む予定があるなら、提出先の様式に合わせておくと二度手間になりません。
よくある質問
Q. 何か月先まで作ればよいですか?
A. 3か月先までを実務の最低ラインとし、融資を検討するなら6〜12か月先まで作ると説明資料として使えます。
Q. 日繰り表との違いは何ですか?
A. 日繰り表は日単位で管理するもので、資金が逼迫している局面で使います。まずは月次から始めるのが現実的です。
Q. 売上予測はどう立てればよいですか?
A. 前年同月の実績をベースに、確定している受注と季節変動を加味します。予測は保守的に置くほうが安全です。
Q. 融資の申込に資金繰り表は必要ですか?
A. 必須とは限りませんが、返済原資を説明する資料として有効です。提出を求められる場合もあります。
まとめ
資金繰り表は、前月繰越金・営業収入・営業支出・財務収支・翌月繰越金の5ブロックで構成します。減価償却費は入れず、借入金の元金返済は入れる——この2点を押さえるだけで精度が変わります。
3か月先まで作り、繰越金がマイナスまたは最低残高を下回る月を見つけたら、時間に余裕があるうちにコストの低い調達手段から検討してください。条件は各社・各窓口で異なります。
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の商品の申込や契約を推奨するものではありません。作成例の数値は説明のための仮の数字です。制度の要件・金利・手数料などの条件は各社および各窓口で異なり、変更される場合があります。ご利用の前に、各社の公式サイトおよび各窓口の公式情報で最新の内容をご確認ください。具体的な会計処理や税務の判断は顧問税理士にご相談ください。詳しくは運営者情報および免責事項をご覧ください。

