クリニックや整骨院でも「カードは使えますか」と聞かれる機会が増えました。一方で、保険診療の窓口負担をキャッシュレスにしてよいのか、手数料はどう考えるのかが分かりにくいのも事実です。この記事では、医療機関・治療院が決済代行を選ぶときに見るべき点を、窓口負担の取り扱いと入金サイクルの観点から整理します。
クリニック・整骨院でキャッシュレス対応が進む背景
患者側の支払い手段はここ数年で大きく変わりました。日常の買い物をカードやコード決済で済ませる人が増えれば、医療機関の窓口だけ現金というのは不便に映ります。とくに次のような場面では、キャッシュレス対応の有無が来院のしやすさに直結します。
- 自費診療・自由診療で、1回の支払額が大きくなるとき
- 回数券・コース契約など、まとまった金額を前払いするとき
- 物販(サポーター、化粧品、サプリメント、インソールなど)を扱っているとき
- 高齢の患者に代わって家族が支払うとき
医院側にも、釣銭準備や日次の現金締めが減る、レジの誤差を追う時間が減るといった運用上の利点があります。一方で手数料という新しいコストが発生するため、「どこまで対応するか」を決めるところから検討が始まります。
保険診療の窓口負担もキャッシュレスで受け取れる
保険診療の一部負担金をカードや電子マネーで受け取ってよいのかは、よく出る疑問です。この点について厚生労働省保険局医療課は、2023年9月29日付の事務連絡で、医療機関等における一部負担金の支払いについて、現金と同様の支払い機能を持つクレジットカードや一定の汎用性のある電子マネーによる支払いは、患者の利便性向上や事務の効率化の観点から差し支えないとの考え方を示しています。
ただし、ポイントの取り扱いには条件が付けられています。付与するポイントの価値は一部負担金の1%を超えないこと、貯まったポイントの利用による窓口支払額の値引きは行わないこと、といった留意事項が示されています。自院で独自のポイント制度を併用している場合は、この点を先に確認しておくのが安全です。
※取り扱いは通知の改正等により変わる可能性があります。最新の内容は厚生労働省・地方厚生局の公表資料でご確認ください。
整骨院・接骨院で療養費の受領委任を扱う場合も、患者が窓口で支払う一部負担金の決済手段という点では考え方は同じです。自費施術や物販が中心の院ほど、キャッシュレス化による効果は大きくなります。
手数料が経営に効くのは「自費と物販」
決済手数料は売上に対して一定率でかかるため、単価の高い自費診療や物販の比率が高いほど、金額としての影響が大きくなります。保険診療の一部負担金は単価が小さいぶん1件あたりの手数料は小さいものの、件数が多ければ積み上がります。
検討の順番としては、次のように整理すると判断しやすくなります。
- 自費・物販・保険それぞれの月間売上と件数を出す
- キャッシュレス比率をどのくらいと見込むかを置く
- 想定手数料率をかけて、月あたりのコスト感をつかむ
- そのコストと、来院しやすさ・現金管理の手間削減を見比べる
手数料率はブランド(カード・コード決済・電子マネー)や契約形態、業種区分によって差があり、各社により異なります。見積もりを取る際は、平均単価と月商を伝えたうえでレンジを提示してもらうと比較しやすくなります。
クリニック・整骨院が決済代行を選ぶときの5つの視点
1. 入金サイクル
決済してから口座に入金されるまでの期間は各社で差があります。家賃・人件費・仕入の支払日と入金日がずれると、売上はあるのに手元資金が薄いという状態になりがちです。月末締め翌月末入金なのか、月2回入金なのか、早期入金オプションがあるのかは、契約前に確認しておきたい項目です。
※入金サイクル・手数料などの条件は各社により異なり、変更される場合があります。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
2. 対応ブランドの範囲
主要な国際ブランドに加えて、コード決済・交通系電子マネーまで受けるかどうかで患者層のカバー範囲が変わります。高齢の患者が多い院では交通系電子マネーの需要が読みにくい一方、自費中心で若年層が多い院ではコード決済の比率が高くなる傾向があります。
3. 端末の形と設置場所
受付カウンターが狭い、施術室で会計する、往診や出張施術があるといった事情によって、据置型・モバイル型・POSレジ一体型のどれが合うかが変わります。回線(有線/Wi-Fi/モバイル通信)の安定性もあわせて確認します。
4. レセコン・予約システムとの兼ね合い
レセプトコンピュータや予約管理システムを使っている場合、会計データを二重入力しなくて済む構成にできるかが日々の手間を左右します。連携できない場合でも、締め作業の手順をあらかじめ決めておくと混乱を避けられます。
5. 初期費用・月額固定費・解約条件
端末代、月額利用料、最低利用期間、解約時の違約金の有無は、契約後に変えにくい部分です。キャンペーンで初期費用が抑えられる場合も、適用条件と期間を書面で確認しておくと後の食い違いを防げます。
複数社の条件をまとめて比べたい場合は、決済代行の一括見積もりサービスを使うと、自院の業種・月商・端末の希望に沿った候補を無料で絞り込めます。
※各社の手数料・入金サイクル・初期費用の条件は異なります。見積もり内容は各社の提示条件をご確認ください。
導入までの流れと院内の準備
申込から利用開始までは、審査と端末の設定が入るため一定の期間がかかります。おおまかには次のような流れです。
- 問い合わせ・見積もり(月商、平均単価、自費/保険の比率を伝える)
- 申込・審査(開設許可証や施術所開設届の写し、本人確認書類、口座情報などが求められることがあります)
- 端末の手配・設定、スタッフ向けの操作確認
- 院内掲示・案内の準備(使えるブランド、対象となる支払い、注意事項)
- 運用開始、締め作業と入金の突き合わせルールを決める
必要書類や審査期間は各社により異なります。開院・移転のタイミングに合わせたい場合は、余裕をもって相談を始めるほうが安全です。
よくある質問
Q. 保険診療の窓口負担をクレジットカードで受け取っても問題ありませんか?
A. 厚生労働省保険局医療課の2023年9月29日付事務連絡では、現金と同様の支払い機能を持つクレジットカードや一定の汎用性のある電子マネーによる支払いは差し支えないとの考え方が示されています。ポイント付与の上限やポイント利用による値引きの禁止といった留意事項があるため、最新の通知内容をご確認ください。
Q. 決済手数料を患者に上乗せして請求できますか?
A. カードブランドの規約では、決済手数料を理由に現金と異なる金額を請求することは一般に認められていません。保険診療の一部負担金についても、定められた金額と異なる額を受け取ることはできません。手数料はコストとして織り込む前提で検討することになります。
Q. 入金までの期間が長いと資金繰りが厳しくなりませんか?
A. 入金サイクルは契約内容によって差があります。支払日と入金日のずれが大きい場合は、入金回数の多いプランや早期入金の仕組みを検討する方法があります。条件は各社により異なるため、事前にご確認ください。
Q. 往診や出張施術でも使えますか?
A. モバイル型端末とスマートフォンの通信環境があれば対応できる構成が一般的です。電波状況が不安定な場所では、オフライン時の挙動や決済のやり直し手順を確認しておくと安心です。
まとめ
クリニック・整骨院の決済代行選びは、対応ブランドの広さだけでなく、入金サイクルと固定費、そして院内の会計オペレーションに合うかどうかで判断すると失敗しにくくなります。まずは自費・物販・保険の売上構成を出し、想定するキャッシュレス比率で手数料の規模感をつかむところから始めるのが現実的です。そのうえで、入金日と支払日のずれを吸収できる条件かどうかを見比べていきましょう。

