企業間取引では、その場で支払を受けるのではなく「月末締め・翌月末払い」の掛け売りが一般的です。請求書の発行、入金の消込、未入金の督促は手間がかかるうえ、回収できないリスクも自社で抱えることになります。この記事では、これらをまとめて引き受けるBtoB決済代行(請求代行)の仕組みと、導入前に確認したいポイントを整理します。
BtoB決済代行(請求代行)とは
BtoB決済代行は、企業間の掛け売り取引において、取引先の与信審査・請求書の発行・入金の消込・未入金時の督促までを代行するサービスです。サービスによっては、取引先が支払わなかった場合でも代金が支払われる「未回収保証」が付きます。
一般消費者向けの決済代行がカード・電子マネー・QRコードなどの決済手段をまとめて扱うのに対し、BtoB決済代行が扱うのは請求書払い(掛け売り)です。目的も「決済手段を増やすこと」ではなく、「売掛金の回収業務と未回収リスクを外に出すこと」に置かれています。
掛け売りが資金繰りを圧迫する仕組み
掛け売りでは、商品やサービスを提供した時点では現金が入りません。入金までの間に発生するのは、次のような負担です。
- 仕入代金・外注費・人件費の支払が先行する
- 請求書の作成・送付、入金確認、消込に事務工数がかかる
- 入金が遅れた取引先への督促に、時間と精神的な負担がかかる
- 取引先が支払えなくなった場合、売掛金がそのまま損失になる
なお、製造委託・役務提供委託などにあたる取引では、2026年1月1日施行の中小受託取引適正化法(通称:取適法。旧・下請代金支払遅延等防止法)により、委託事業者は役務の提供を受けた日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内に支払期日を定める義務を負います。支払期日までに支払われなかった場合の遅延利息は年率14.6%と定められています。
※上記は取適法に定められた委託事業者の義務の要約です。適用されるかどうかは、取引の内容と、委託事業者・中小受託事業者それぞれの資本金額または従業員数(300人・100人の基準)によって決まります。自社の取引が対象になるかは、公正取引委員会・中小企業庁の公表資料でご確認ください。
BtoB決済代行でできること4つ
1. 取引先の与信審査
新規の取引先に掛け売りで応じてよいかを、サービス側が審査します。自社で信用調査を行う手間を減らせる一方、与信枠が想定より低く設定され、大口の受注を掛け売りで受けられないことがあります。
2. 請求書の発行・送付
請求書の作成と送付を代行します。郵送に加え、メール送付や電子請求に対応しているかは、サービスによって異なります。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応状況もあわせて確認してください。
3. 入金消込
入金があったかどうかの確認と、どの請求に対する入金かを突き合わせる作業を引き受けます。取引件数が多いほど効果が大きい部分です。
4. 未回収保証と督促
取引先が期日に支払わなかった場合、督促を代行します。保証付きのサービスであれば、保証の範囲内で代金が支払われます。ただし保証には上限額や免責条件が設定されているのが通常で、「どんな場合でも全額が保証される」わけではありません。契約書で保証範囲をご確認ください。
導入前に確認したい5つのポイント
手数料の内訳
請求額に対する料率のほか、月額の基本料金、請求書1通あたりの発行費用、郵送費などが別建てになっている場合があります。自社の月間請求件数・平均請求額を当てはめて、月あたりの総額で比べてください。
保証の範囲と上限
保証の有無、取引先ごとの保証上限額、免責事由(納品トラブルに起因する不払いなど)を確認します。保証なしの請求代行のみのプランもあります。
自社への入金タイミング
取引先からの入金を待たずに支払われるのか、入金後に精算されるのかで、資金繰りへの効果は大きく変わります。入金サイクルは導入目的に直結する項目です。
取引先側の手間
支払先の口座が変わる、請求書の様式が変わるといった変更は、取引先に説明が必要です。取引先が使える支払方法(銀行振込・口座振替・コンビニ払いなど)の選択肢もあわせて確認してください。
既存システムとの連携
会計ソフトや販売管理システムとのデータ連携ができるかどうかで、導入後の運用負荷が変わります。CSV出力のみか、API連携が可能かを確認しておくと安心です。
※記載の料金・条件は2026年9月時点で各社公式サイトに掲載されていた内容です。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
BtoC向け決済代行との違い
| 項目 | BtoB決済代行(請求代行) | BtoC向け決済代行 |
|---|---|---|
| 主な支払手段 | 請求書払い(掛け売り)、口座振替 | クレジットカード、電子マネー、QRコード |
| 与信の対象 | 取引先企業 | カード会社等が個人に対して実施 |
| 主な導入目的 | 回収業務の削減、未回収リスクの移転 | 決済手段の拡充、機会損失の防止 |
| 費用の考え方 | 料率+請求件数に応じた費用 | 決済手数料+端末費用など |
実店舗やECで一般消費者から代金を受け取る場合は、BtoC向けの決済代行が対象になります。企業間の掛け売りと消費者向け決済の両方がある事業では、それぞれ別のサービスを組み合わせる形になるのが一般的です。
よくある質問
Q. BtoB決済代行とファクタリングはどう違いますか。
A. ファクタリングは発生済みの売掛金を売却して期日前に現金化する仕組みで、スポット利用が中心です。BtoB決済代行は、請求から回収までの業務を継続的に代行する仕組みで、目的が業務効率化と未回収リスクの移転にあります。
Q. 取引先に知られずに導入できますか。
A. 請求書の差出人や振込先が変わるため、取引先への案内が必要になるのが一般的です。案内文のテンプレートを用意しているサービスもあるため、事前にご確認ください。
Q. 少額・少件数でも導入する意味はありますか。
A. 月額の基本料金があるサービスでは、件数が少ないと1件あたりの負担が重くなります。まずは自社の請求件数を当てはめて試算し、削減できる工数と比べて判断してください。
Q. 途中で解約できますか。
A. 最低契約期間や解約の申出期限が設定されている場合があります。契約前に、契約期間・解約条件・違約金の有無をご確認ください。
まとめ
BtoB決済代行は、掛け売りにともなう請求・消込・督促の業務と、未回収リスクをまとめて外に出すための仕組みです。比較の軸になるのは、手数料の総額、保証の範囲と上限、自社への入金タイミングの3点です。あわせて、取引先への案内の手間と既存システムとの連携も確認しておくと、導入後のギャップを減らせます。条件は各社で異なるため、自社の請求件数と平均請求額を当てはめたうえで複数社を比較してください。
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定のサービスの利用を推奨するものではありません。手数料・保証範囲・契約条件は各社で異なり、変更される場合があります。お申し込みの前に公式サイトの最新情報をご確認ください。参考:中小企業庁「中小受託取引適正化法」(2026年9月24日確認)、公正取引委員会「取適法」(2026年9月24日確認)。運営者情報は運営者情報、免責事項は免責事項をご覧ください。

