廃業を経験したあと、もう一度事業を始めたい。でも「一度失敗した自分が公的融資を使えるのか」と不安に感じる方は少なくありません。日本政策金融公庫には、廃業歴のある方の再起を後押しする「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」があります。この記事では、対象者の条件・融資限度額・返済期間・利率の考え方を公式情報にもとづいて整理します。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)とは
再挑戦支援資金は、日本政策金融公庫(以下、日本公庫)が用意している融資制度のひとつです。公庫は制度の趣旨を「一旦事業に失敗した起業家の経営者としての資質や事業の見込みなどを評価することにより、再起を図るうえで困難な状況に直面している方の再挑戦を支援します」と説明しています。
ポイントは、過去の廃業歴そのものだけで判断するのではなく、これから行う事業の中身を見て判断する枠組みが用意されている、という点です。民間金融機関からの資金調達が難しくなりやすい再起業のタイミングで、選択肢のひとつになり得ます。
なお、窓口は「国民生活事業」と「中小企業事業」に分かれており、制度名と条件が異なります。国民生活事業では「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」という名称で扱われ、中小企業事業では「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」という名称で案内されています。小規模事業者・個人事業主の再起業は、まず国民生活事業が入口になるのが一般的です。
対象になるのはどんな人か(3つの条件)
国民生活事業・中小企業事業のいずれも、「新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方」であることが前提です。そのうえで、次のすべてに該当することが条件として示されています。
- 廃業歴等を有する個人、または廃業歴等を有する経営者が営む法人であること
- 廃業時の負債が、新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること
2つめの「負債が整理される見込み」は、実務上いちばん詰まりやすいところです。前の事業の借入が残ったままだと、新事業のキャッシュフローを圧迫します。整理の見込みを、自分の言葉と数字で説明できる状態にしておきたいところです。
また国民生活事業では、適正な事業計画を策定しており、その計画を遂行する能力が十分あると認められる方に限る、という注記が置かれています。創業計画書の提出を通じて内容が確認されます。
融資限度額と返済期間
窓口によって金額のスケールが大きく異なります。2026年9月時点で公庫の公式サイトに掲載されている内容は、次のとおりです。
| 項目 | 国民生活事業 新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連) | 中小企業事業 再挑戦支援資金(直接貸付) |
|---|---|---|
| 融資限度額 | 7,200万円 | 7億2千万円 |
| 返済期間(設備資金) | 20年以内(うち据置期間5年以内) | 20年以内(うち据置期間2年以内) |
| 返済期間(運転資金) | 15年以内(うち据置期間5年以内) | 15年以内(うち据置期間2年以内) |
| 資金のお使いみち | 設備資金および運転資金(前事業に係る債務を返済するために必要な資金を含む) | 設備資金および長期運転資金 |
※記載の内容は2026年9月時点で日本政策金融公庫の公式サイトに掲載されていた内容です。制度の条件は変更される場合がありますので、最新の内容は公式サイトおよび最寄りの支店でご確認ください。
国民生活事業側で注目したいのは、資金のお使いみちに「前事業に係る債務を返済するために必要な資金を含みます」と明記されている点です。据置期間が最長5年以内と長めに設定されている点もあわせて、再起の立ち上がり期間を想定した設計になっています。
利率(金利)はどう決まるか
利率は原則として基準利率が適用され、一定の要件を満たす場合に特別利率が適用される仕組みです。国民生活事業では、女性の方、35歳未満または55歳以上の方、認定特定創業支援等事業を受けて市区町村の証明書を取得した方などが特別利率の対象として挙げられています。中小企業事業では、技術・ノウハウ等に新規性がみられる事業に係る資金について、2億7千万円まで特別利率が適用される旨が示されています。
基準利率・特別利率の具体的な数値は市場金利に応じて見直されるため、この記事では数値を掲載していません。申込みを検討する段階で、公庫の金利情報ページで当日の利率をご確認ください。担保の有無や返済期間によっても適用利率は変わります。
申し込み前に整理しておきたい3つのこと
- 廃業の経緯を、事実ベースで説明できるようにする。 何が起きて、どこで判断を誤り、今回はどう変えるのか。取り繕うより、原因の特定と再発防止策がセットになっている方が伝わります。
- 前事業の負債の状況を一覧にする。 残債、返済条件、保証の有無を書き出します。整理の見込みが立っているかどうかが条件のひとつになっているためです。
- 新事業の資金繰り表を作る。 据置期間をどう使い、いつから返済原資が出るのかを月次で示せると、計画の実現性が伝わりやすくなります。
なお、国民生活事業では経営者保証免除特例制度・創業支援貸付利率特例制度・賃上げ貸付利率特例制度との併用が案内されています。該当しそうなものがあれば、相談時に確認しておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 自己破産をしていても申し込めますか?
A. 公式サイトでは「廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込み等であること」「廃業の理由・事情がやむを得ないもの等であること」が条件として示されています。個別の可否は事情によって異なるため、支店窓口でご相談ください。この記事の内容は可否を保証するものではありません。
Q. 前の事業の借金の返済にも使えますか?
A. 国民生活事業の「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」では、資金のお使いみちに前事業に係る債務を返済するために必要な資金を含む旨が明記されています。中小企業事業の再挑戦支援資金は設備資金および長期運転資金が対象です。
Q. 廃業から何年以内なら対象ですか?
A. 廃業からの経過年数ではなく、「新たに事業を始める方、または事業開始後おおむね7年以内の方」という新事業側の基準が示されています。詳細な取り扱いは窓口でご確認ください。
Q. 審査にどのくらい時間がかかりますか?
A. 公式サイトに標準的な所要日数の記載はありません。書類の準備状況や面談の日程によって変わるため、余裕をもったスケジュールで進めることをおすすめします。
まとめ
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)は、廃業歴があることを理由に一律で門前払いにしない設計の公的融資です。国民生活事業なら融資限度額7,200万円、据置期間は最長5年以内で、前事業の債務返済にも充てられる余地があります。一方で、負債整理の見込みと事業計画の実現性という2点は、相談の場で問われやすい部分です。
条件は窓口や個別の事情によって異なります。数字だけで判断せず、資金繰り表と計画書を持って支店に相談するところから始めてください。
本記事は制度の概要を整理した情報提供であり、融資の可否や条件を保証するものではありません。制度内容・限度額・返済期間・利率は変更される場合があります。参考:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」および「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」(2026年9月25日確認)。運営方針は運営者情報、免責事項は免責事項をご覧ください。

