危機関連保証は、大規模な経済危機や災害で全国的に資金繰りが悪化したときに、信用保証協会の保証枠を別枠で上乗せする制度です。ふだんは動いておらず、国が「実施が必要」と認めたときだけ発動します。この記事では、発動までの流れ、事業者側が受ける認定の要件、別枠の保証限度額と保証料率、セーフティネット保証との違いを、公式に公表されている内容から整理します。
危機関連保証とは|どんなときに使える制度か
危機関連保証は、内外の金融秩序の混乱などで全国的な信用収縮が生じ、国が危機関連保証の実施が必要と認めた場合に、売上高等が減少している中小企業者を支援する措置です。中小企業庁の公表資料では、平成30年4月1日施行とされています。
ポイントは「全国一律」であることです。取引先の倒産や特定業種の不振に対応する制度と違い、危機関連保証は経済全体が急激に冷え込んだ局面を想定しています。そのため、ふだんは発動しておらず、2026年10月15日時点の中小企業庁の案内では「現在の認定案件はございません」と記載されています。
つまり今すぐ申し込める制度ではありません。それでも仕組みを知っておく価値があるのは、いざ発動したときに動ける事業者と動けない事業者の差が、売上の記録の整え方で決まるためです。
発動されるまでの流れ
危機関連保証が使えるようになるまでには、国の判断と事業者ごとの認定という二段構えの手続きがあります。
国が「実施が必要」と認める段階
中小企業庁の案内では、発動の前提として、資金繰りDI等の指標が、リーマンショック時や東日本大震災時と同程度に短期間で急速に低下していることが確認される必要があるとされています。景況感が少し悪いという程度では動かない、かなり高い敷居だと読めます。
国が認めると、対象となる事象(認定案件)と期間が示されます。ここで初めて、事業者が市区町村に認定を申請できる状態になります。
事業者が受ける認定の要件
事業者側の要件として、中小企業庁の案内では次の2点が挙げられています。
- 金融取引に支障があり、正常化のため資金調達を必要としていること
- 認定案件に起因して、原則として「最近1か月間の売上高等が前年同月比で15%以上減少」しており、かつ、その後2か月間を含む3か月間の売上高等が前年同期比で15%以上減少する見込みであること
注目したいのは、実績1か月と見込み2か月を合わせた3か月で見る点です。直近1か月の落ち込みだけでなく、その先の見通しも示す必要があります。月次の売上を前年同月と並べて出せる状態になっているかが、そのまま申請のしやすさにつながります。
認定の窓口は、本店所在地(個人事業主は主たる事業所所在地)の市町村または特別区の商工担当課等です。認定申請書を2通提出して認定を受け、その認定書を持って希望する金融機関または信用保証協会に保証付き融資を申し込む流れになります。認定を受けても審査の結果が希望に沿わない場合があるとされている点は、押さえておきたいところです。
別枠の保証限度額と保証料率
危機関連保証の特徴は、通常の保証枠とは別に枠が付く点です。中小企業庁が示している限度額は次のとおりです。
| 区分 | 一般保証限度額 | 別枠(危機関連保証) |
|---|---|---|
| 普通保証 | 2億円以内 | 2億円以内 |
| 無担保保証 | 8,000万円以内 | 8,000万円以内 |
| 無担保無保証人保証 | 2,000万円以内 | 2,000万円以内 |
普通保証と無担保保証を合わせた別枠の上限は、信用保証協会の案内では法人・個人が2億8,000万円、組合が4億8,000万円と示されています(茨城県信用保証協会の例。災害関係保証等と合わせた上限は5億6,000万円とされています)。限度額や上限の示し方は協会ごとに異なる場合があるため、お住まいの地域の協会の案内をご確認ください。
保証料率は、中小企業庁の案内では0.8%以内で各信用保証協会が定めるとされています。実際の料率は協会ごとに示されており、たとえば茨城県信用保証協会では年0.80%と案内されています。保証期間についても協会の案内があり、同協会の例では10年以内(据置2年以内)です。
※記載の限度額・保証料率・保証期間は2026年10月15日時点で中小企業庁および信用保証協会の公式サイトに掲載されていた内容です。無担保・普通保証の区分や据置期間の条件を含み、協会ごとに異なる場合があります。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
もう一点、金融機関との責任共有の扱いがあります。茨城県信用保証協会の案内では、危機関連保証は「責任共有」の対象外とされています。通常の保証付き融資で適用される部分保証の仕組みが及ばないという整理で、金融機関側が融資に踏み込みやすくなる方向に働く条件です。保証付き融資そのものの仕組みは信用保証協会とは|役割と保証付き融資の仕組みをやさしく解説で解説しています。
セーフティネット保証との違い
似た制度としてセーフティネット保証(経営安定関連保証)があります。違いは、カバーする範囲です。
- セーフティネット保証1号は取引先の倒産、2号は取引先の事業活動の縮小、4号は突発的な災害、5号は業況の悪化している指定業種など、原因ごとに号数が分かれています
- 危機関連保証は原因を業種や取引先で区切らず、全国的な信用収縮そのものを対象にします
重要なのは併用の扱いです。中小企業庁の案内では、危機関連保証と経営安定関連保証を併用する場合、それぞれに別枠保証限度額が付与されるとされています。つまり、要件を満たせば枠を重ねて使う設計になっています。
号数別の要件は、セーフティネット保証1号とは|取引先倒産時に使える資金繰り支援、セーフティネット保証4号の申請方法|対象と流れ、セーフティネット保証5号とは?指定業種と認定要件をわかりやすく解説で個別に整理しています。
いま備えておけること
認定案件がない時期にできる準備は、要件の形に合わせた資料を持っておくことです。
- 月次の売上高を前年同月と並べた一覧を、少なくとも直近2年分すぐ出せる状態にしておく
- 見込みを説明できる根拠(受注残、契約の解約連絡、来客数など)を残しておく
- 本店所在地の市区町村の商工担当課の窓口と必要書類の様式を一度確認しておく
発動局面では窓口が混み合い、認定が出るまでに時間がかかることも想定されます。手元資金が尽きる前に動けるかは、資金繰り表で現金が薄くなる時期を把握できているかに左右されます。あわせて、自治体の制度融資や、税金・社会保険料の納付猶予のように、保証とは別の時間稼ぎの手段も選択肢に入れておくと判断の幅が広がります。日本政策金融公庫側の受け皿としてはセーフティネット貸付もあります。
よくある質問
Q. 危機関連保証はいま申し込めますか。
A. 2026年10月15日時点の中小企業庁の案内では「現在の認定案件はございません」とされています。国が実施が必要と認めた場合に発動する制度のため、発動していない時期は申込の対象になりません。
Q. 売上が15%以上減っていれば認定されますか。
A. 売上減少は要件の一つです。中小企業庁の案内では、認定案件に起因する減少であること、金融取引に支障があり正常化のため資金調達を必要としていることも要件とされています。認定の判断は窓口となる市区町村が行うため、該当するかは窓口でご確認ください。
Q. セーフティネット保証と同時に使えますか。
A. 中小企業庁の案内では、危機関連保証と経営安定関連保証を併用する場合、それぞれに別枠保証限度額が付与されるとされています。実際に両方を使えるかは、それぞれの認定要件を満たすかと、金融機関・信用保証協会の審査によります。
Q. 認定を受ければ融資は受けられますか。
A. 認定は保証付き融資を申し込むための前提で、融資そのものを約束するものではありません。中小企業庁の案内にも、審査の結果、希望に沿えない場合があると記載されています。
まとめ
危機関連保証は、全国的な信用収縮が起きたときに保証枠を別枠で上乗せする制度です。発動には、資金繰りDI等の指標がリーマンショック時や東日本大震災時と同程度に急速に低下していることの確認という高い敷居があり、2026年10月15日時点では認定案件がありません。
発動時に使えるかどうかを分けるのは、原則として直近1か月の売上が前年同月比15%以上減少し、その後2か月を含む3か月でも同程度の減少見込みであることを示せるかです。条件は各信用保証協会・各窓口で異なり変更される場合があるため、実際の手続きの前に公式サイトと窓口でご確認ください。
本記事は一般的な情報の整理を目的としたものです。危機関連保証の発動状況、保証限度額、保証料率、保証期間、認定要件は、公式に公表されている内容に基づいて記載していますが、変更される場合があります。参考:中小企業庁「危機関連保証制度(大規模な経済危機、災害等による信用収縮への対応)」、茨城県信用保証協会「危機関連保証」(いずれも2026年10月15日確認)。認定の可否は窓口となる市区町村の判断によります。実際の申込の前に、各公式サイトおよび窓口で最新の条件をご確認ください。特定のサービスの利用を推奨するものではありません。運営者情報は運営者情報、免責事項は免責事項をご覧ください。

