ものづくり補助金を申請しようと調べたら、名称が変わっていた——2026年6月、ものづくり補助金は中小企業新事業進出補助金と統合され「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になりました。この記事では3つの補助対象事業枠と補助上限額、第1回公募のスケジュール、申請前に確認したい要件を、公式情報にもとづいて整理します。
ものづくり補助金は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に統合された
中小企業庁は2026年6月30日付のお知らせで、同年6月29日より「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募要領を公開したと発表しました。これは従来のものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)と、中小企業新事業進出補助金を統合した制度です。
事務局は独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)で、公式サイトは制度の目的を「中小企業等が企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上を図り、賃上げにつなげていくこと」と説明しています。設備投資を入口にして、売上と賃金の両方を伸ばす計画が求められる制度、という位置づけです。
変わったのは名前だけではありません。旧制度でいくつもあった申請枠が、新制度では「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つに整理されました。自社がどの枠に当たるのかを最初に見極めることが、準備の出発点になります。
3つの補助対象事業枠と補助上限額
公式サイトの補助金概要ページによると、枠ごとの補助率・補助上限額は次のとおりです。いずれも従業員数によって上限額が変わり、賃上げ特例の適用を受ける場合は上限が引き上げられます。
革新的新製品・サービス枠
革新的な新製品・新サービス開発の取組が対象です。公募要領では、既存の製品・サービスの生産等のプロセスについて改善・向上を図るだけの事業や、単に機械装置・システム等を導入するにとどまり新製品・新サービスの開発を伴わないものは補助対象事業に該当しない、とされています。補助率は中小企業者が1/2、小規模企業・小規模事業者および再生事業者が2/3。補助下限額は100万円です。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜5人 | 750万円 | 850万円 |
| 6〜20人 | 1,000万円 | 1,250万円 |
| 21〜50人 | 1,500万円 | 2,500万円 |
| 51人以上 | 2,500万円 | 3,500万円 |
新事業進出枠
既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出が対象です。ここでいう「新規性」は日本初・世界初という意味ではなく、あくまで申請する中小企業等にとっての新規性だと公式サイトは説明しています。補助率は中小企業者(小規模企業・小規模事業者、再生事業者を含む)で1/2、補助下限額は750万円です。
| 従業員数 | 補助上限額 | 賃上げ特例適用時 |
|---|---|---|
| 1〜20人 | 2,500万円 | 3,000万円 |
| 21〜50人 | 4,000万円 | 5,000万円 |
| 51〜100人 | 5,500万円 | 7,000万円 |
| 101人以上 | 7,000万円 | 9,000万円 |
グローバル枠
海外市場開拓(輸出)に向けた、国内の輸出体制強化の取組が対象です。補助率は2/3、補助下限額は750万円で、従業員数別の補助上限額は新事業進出枠と同じ区分です。この枠だけ海外旅費・通訳翻訳費が補助対象経費に含まれ、新事業進出枠とあわせて建物費も対象になります。なお公式サイトは、取引先主導の事業は自発的な取組とは言えず補助対象外としています。
※記載の補助率・補助上限額・日程は2026年9月時点で公式サイトに掲載されていた第1回公募の内容です。経費区分ごとの補助上限など細かな条件は公募要領に定めがあります。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
第1回公募のスケジュール
公式サイトの公募スケジュールページによると、第1回公募の日程は次のように公表されています。申請受付と応募締切は当初の予定から後ろ倒しされており、採択結果発表の時期もあわせて変更されています。
| 段階 | 時期 |
|---|---|
| 公募開始 | 令和8年6月29日(月) |
| 申請受付 | 令和8年9月30日(水)※当初8月31日から変更 |
| 応募締切 | 令和8年10月30日(金)18:00厳守 ※当初9月30日から変更 |
| 採択結果発表 | 令和9年1月(予定)※当初令和8年12月から変更 |
| 交付申請締切 | 原則、採択発表日から2か月以内 |
補助事業の実施期間は枠によって異なります。新事業進出枠・グローバル枠は交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)、革新的新製品・サービス枠は交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)と公表されています。
実務上いちばん注意したいのは、交付決定日より前に補助事業に係る製品の購入や役務の提供に係る契約(発注を含む)をした経費は補助対象にならない、という点です。見積もりを取るところまでは進めても、正式な発注は交付決定を待つ、という段取りが基本になります。申請は電子申請システムでのみ受け付けられます。
申請前に確認したい6つの要件
この補助金は、3〜5年の事業計画に取り組むことが前提になっています。公式サイトが挙げている補助対象事業の要件は次の6つです。
- 付加価値額要件:事業計画期間において、付加価値額の年平均成長率が4.0%以上増加する見込みの事業計画を策定すること。
- 賃上げ要件:一人当たり給与支給総額の年平均成長率を3.5%以上増加させること。目標値未達の場合は補助金の返還義務があるとされています。
- 事業場内最賃水準要件:毎年、事業場内最低賃金が補助事業実施場所の都道府県における地域別最低賃金より30円以上高い水準であること。こちらも未達の場合は返還義務があるとされています。
- ワークライフバランス要件:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定し、「両立支援のひろば」で公表していること。
- 子育て等に関する職場環境整備に向けた取り組み要件:職場環境整備に向けた取り組みを行うこと。
- 金融機関要件:補助事業の実施にあたって金融機関等から資金提供を受ける場合は、資金提供元の金融機関等から事業計画の確認を受けていること。
4番目のワークライフバランス要件は、行動計画の策定と公表に日数がかかることがあります。申請を検討する段階で、自社が公表済みかどうかを先に確認しておくと動きやすくなります。
賃上げ特例と地域別最低賃金引上げ特例
補助上限額や補助率を引き上げる特例も用意されています。いずれも追加の要件を満たすことが条件です。
賃上げ特例は、補助上限額を引き上げる特例です。公式サイトによると、事業計画期間において、賃上げ要件の一人当たり給与支給総額の基準値に加えてさらに年平均成長率+2.5%(合計で年平均成長率+6.0%)以上増加させること、事業場内最賃水準要件の基準値に加えてさらに+20円(合計で+50円以上)以上増加させること、の両方を満たす必要があります。要件未達の場合は補助金の返還義務があるとされています。
地域別最低賃金引上げ特例は、補助率を引き上げる特例です。2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上〜2025年度改定の地域別最低賃金未満」で雇用している従業員が全従業員数の30%以上である月が3か月以上あること、が要件として示されています。
上限額が上がるのは魅力的ですが、特例は達成できなかったときの返還リスクとセットです。人件費の見通しを立てたうえで、特例を使うかどうかを判断する流れになります。補助金と助成金では審査や入金の考え方が異なるため、あわせて補助金と助成金の違いも押さえておくと選びやすくなります。
よくある質問
Q. 「ものづくり補助金」という呼び方はもう使われないのですか?
A. 制度としては統合され、公式の名称は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」になっています。中小機構の補助金活用ナビなどでは「新事業進出・ものづくり補助金」という短い呼び方も使われています。検索する際は新しい名称で公式サイトを確認するほうが、古い公募回の情報と混ざりにくくなります。
Q. 採択されたらすぐに補助金が入金されますか?
A. この補助金は、交付決定のあとに補助事業を実施し、実績報告・額確定を経てから清算払請求を行う流れが公表されています。つまり支出が先、入金が後になります。設備の支払いをどう賄うかは別に考えておく必要があり、つなぎ資金の調達方法もあわせて検討しておくと計画が立てやすくなります。
Q. 賃上げの目標を達成できなかったら、補助金は返さないといけませんか?
A. 公式サイトでは、賃上げ要件・事業場内最賃水準要件・賃上げ特例要件について「目標値未達の場合、補助金返還義務あり」と明記されています。返還の具体的な範囲や判定方法は公募要領に定めがあるため、申請前に公募要領の該当箇所をご確認ください。
Q. 交付決定の前に設備を発注しても大丈夫ですか?
A. 公式サイトは、交付決定日より前に補助事業に係る製品の購入や役務の提供に係る契約(発注を含む)等をした経費は補助対象にならない、としています。納期の都合で早く動きたい場合でも、発注のタイミングは事務局と設備業者の双方に確認しながら進めるのが安全です。
Q. 小規模な会社でも申請できますか?
A. 革新的新製品・サービス枠は従業員1〜5人の区分が設けられており、補助下限額は100万円とされています。一方、新事業進出枠とグローバル枠は補助下限額が750万円で、相応の投資規模が前提になります。自社の投資額に対してどの枠が現実的かを、下限額から逆算して考えると絞り込みやすくなります。
まとめ
ものづくり補助金は2026年6月に新事業進出・ものづくり商業サービス補助金へ統合され、3つの枠に整理されました。第1回公募の応募締切は令和8年10月30日18時と公表されており、事業計画の作成と要件確認にかけられる時間は限られています。まずは自社がどの枠に当たるかと、ワークライフバランス要件の公表状況を確認するところから始めるのが現実的です。
補助金は支出が先・入金が後の制度です。採択を前提に資金繰りを組むのではなく、公的融資やほかの支援制度と組み合わせて考えておくと、事業計画そのものが通りやすくなります。
※本記事は2026年9月17日時点で公開されている公式情報にもとづいて作成しています。参考:中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金|補助金概要」「公募スケジュール」(2026年9月17日確認)、中小企業庁「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開しました」(2026年9月17日確認)。制度内容・日程・金額は変更される場合があります。申請の可否や具体的な取り扱いは、公募要領および事務局・認定支援機関でご確認ください。運営者情報は運営者情報、免責事項は免責事項をご覧ください。

