融資のたびに社長個人が連帯保証人になる「経営者保証」。日本政策金融公庫の経営者保証免除特例制度は、一定の要件を満たす法人の融資で、この保証を外せる仕組みです。要件は何か、利率は上がるのか、信用保証協会側にはどんな選択肢があるのか。公式情報をもとに整理します。
経営者保証免除特例制度とは
経営者保証免除特例制度は、日本政策金融公庫(国民生活事業)が「経営者保証に関するガイドライン」に対応する制度として取り扱うものです。法人向け融資で、代表者の保証を不要とする取り扱いを選べます。
前提となる経営者保証に関するガイドラインは2013年12月5日に公表され、2014年2月1日から適用が始まりました。法律ではなく自主的なルールですが、金融機関はこれを踏まえた対応を求められています。
単独の融資制度ではなく「特例」である点に注意
この制度自体が資金を貸すわけではありません。一般貸付などの各種融資制度に上乗せして使う「特例」で、融資限度額や返済期間はベースの制度側の条件が適用されます。一部に利用できない融資制度もあるため、組み合わせられるかは窓口でご確認ください。
利用できる方の要件は7つ
公庫が示す要件は、次の1〜7のいずれかを満たし、経営状況等から借入返済が可能と見込まれる法人、というものです。いずれか一つでよい点がポイントです。
- 税務申告を2期以上実施し、(1)法人と代表者の一体性の解消が一定程度図られていることを公庫が確認でき、(2)最近2期の減価償却前経常利益が2期連続して赤字でない、または直近期が債務超過でない
- 新たに事業を始める方、または税務申告を2期終えていない方で、上記1(1)を満たす
- 物的担保の提供がある方で、上記1(1)を満たす
- 新規開業後おおむね5年以内などで、技術・ノウハウ等に新規性がみられる方等で、上記1(1)を満たす
- 取引金融機関で代表者保証の免除に関する協調対応が見込める方、または同行から代表者保証を免除された借入残高がある方
- 事業承継・集約・活性化支援資金、または生活衛生事業承継・集約・活性化支援資金の利用者
- ソーシャルビジネス支援資金を利用されるNPO法人の方
要件1(1)の「法人と代表者の一体性の解消」は、公庫の注記で「事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないこと」と説明されています。役員貸付金が残る会社は、ここでつまずきがちです。
なお要件1(2)はいずれかで足ります。赤字決算でも、物的担保を提供する要件3や取引金融機関と歩調を合わせる要件5という入口が残ります。
利率・担保・その他の条件はどう変わるか
気になるのは「保証を外すと金利が上がるのか」でしょう。公庫のページでは、利率(年)は各種融資制度に定める利率とされ、上乗せ利率はありませんと明記されています。担保は提供の有無を申込時に選択でき、その他の貸付条件も各制度の条件が適用されます。
※記載の制度内容・利率の扱いは2026年10月13日時点で日本政策金融公庫の公式サイトに掲載されていた内容です。審査の結果ご希望に沿えない場合があり、一部利用できない融資制度もあります。最新の内容は各公式サイトでご確認ください。
無保証での融資はどのくらい実行されているのか
公庫の「保証人に依存しない融資実績」では、国民生活事業の令和7年度として、法人向け融資のうち新規に無保証で融資した件数が54,465件(法人向け融資全体の48.1%)、金額が4,932億円(同47.1%)と示されています。無保証の融資は例外的な取り扱いではなくなってきています。
※上記は日本政策金融公庫「保証人に依存しない融資」(2026年10月13日確認)に掲載されていた令和7年度の値で、普通貸付(直接扱)および生活衛生貸付(直接扱)の合計、かつ公表時点の速報での集計値とされています。今後の精査で変動し得ます。
信用保証協会側にも「保証を外す」選択肢がある
銀行や信用金庫から信用保証協会の保証付きで借りる場合にも、経営者保証を外す制度があります。公庫とは考え方が違うため、並べて押さえておくと選びやすくなります。
事業者選択型経営者保証非提供制度
中小企業庁によると2024年3月15日から取扱いが開始された制度で、保証料率を上乗せすることで経営者保証を提供しないことを事業者側が選べます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 取扱開始 | 2024年3月15日 |
| 保証限度額 | 8,000万円(無担保保険に係る保証など) |
| 保証料率の上乗せ | 要件(直近決算で債務超過でない/直近2期の減価償却前経常利益が連続赤字でない)の両方を満たす場合は所定料率に0.25%上乗せ |
| 同上 | いずれか一方のみ、または設立後2事業年度の決算がない場合は0.45%上乗せ |
| 主な要件 | 過去2年間の決算書等を金融機関の求めに応じて提出/直近決算で代表者への貸付金等がない/役員報酬・賞与・配当等が社会通念上相当な範囲内/継続して満たす旨の誓約書の提出 ほか |
※表の内容は中小企業庁「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します」(2026年10月13日確認)の掲載内容です。設立直後で決算が未了の場合は一部要件が除外されます。上乗せ後の具体的な料率は各信用保証協会でご確認ください。
代表者への貸付金がないこと、役員報酬が過大でないこと。公庫の制度と同じく「会社と社長の財布が分かれているか」が入口です。
スタートアップ創出促進保証
創業期向けの制度もあります。中小企業庁によると2023年3月15日に取扱いが開始され、保証限度額3,500万円、保証期間10年以内、据置期間は原則1年以内(一定の条件を満たす場合は3年以内)。保証料率は各信用保証協会所定の創業関連保証の料率に0.2%を上乗せする形です。
対象は創業予定者、分社化予定者、創業後5年未満の法人、分社化後5年未満の法人、創業後5年未満の法人成り企業。公庫の新規開業資金を検討中の方は、両者を見比べてみてください。
※制度内容は中小企業庁「経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します。」(2026年10月13日確認)の掲載内容です。条件は各信用保証協会・各金融機関で異なる場合があります。
申し込み前に整理しておきたいこと
決算書の中身が整っていなければ要件に届きません。次の順で進めましょう。
- 役員貸付金を確認する:事業上の必要が認められない貸付金が残っていないか。残っていれば解消の計画を立てる。
- 役員報酬の水準を見直す:保証協会の制度では「社会通念上相当な範囲内」が要件です。利益が出ていない年に高額な報酬があれば説明を求められます。
- 減価償却前経常利益と純資産を押さえる:2期連続赤字か、債務超過かが分かれ目です。資金繰り表とあわせて把握しておきましょう。
- どの融資制度に乗せるかを決める:単独では使えないため、公庫融資の流れを踏まえてベースの制度を先に選びます。
- 他の無担保・無保証人の制度も並べる:小規模事業者ならマル経融資、資本性資金なら資本性ローンも候補です。
条件は各制度・各窓口で異なります。決算書を持って公庫の支店や取引金融機関、よろず支援拠点に相談しておくと手戻りが少なくなります。
よくある質問
Q. 経営者保証を外すと金利は上がりますか。
A. 公庫の経営者保証免除特例制度では、利率は各種融資制度に定める利率とされ、上乗せ利率はないと公式ページに明記されています。一方、信用保証協会の事業者選択型経営者保証非提供制度は保証料率に0.25%または0.45%を上乗せする設計です。
Q. 個人事業主でも使えますか。
A. 公庫の経営者保証免除特例制度は法人が対象です。個人事業主はそもそも経営者保証という形をとらないため、無担保・無保証人で借りられる他の制度を検討することになります。
Q. 赤字決算でも申し込めますか。
A. 要件1は「減価償却前経常利益が2期連続して赤字でない」「直近期が債務超過でない」のいずれかを満たせばよいとされています。物的担保を提供する要件3や、取引金融機関の協調対応が見込める要件5もあります。
Q. 既存の借入についている経営者保証も外せますか。
A. この制度は新たな融資で保証を免除するものです。既存借入の保証解除は、ガイドラインに沿って金融機関と個別に協議する領域になります。
まとめ
経営者保証免除特例制度は、公庫の融資で代表者保証を外す「特例」です。要件は7つのいずれかで、上乗せ利率はありません。信用保証協会側には、保証料率に0.25%または0.45%を上乗せする事業者選択型経営者保証非提供制度や、創業期向けのスタートアップ創出促進保証があります。
どの制度も入口は「会社と個人の線引きができているか」です。役員貸付金、役員報酬、直近2期の損益。この3点を整えることが、どの窓口でも効いてきます。
本記事は制度の概要を整理した一般的な情報であり、個別の融資可否や適用条件を保証するものではありません。参考:日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」「保証人に依存しない融資」、中小企業庁「保証料率の上乗せにより経営者保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を開始します」「経営者の個人保証を不要とする創業時の新しい保証制度(スタートアップ創出促進保証)を開始します。」(いずれも2026年10月13日確認)。制度は改正される場合があります。お申し込みの前に各公式サイトおよび窓口でご確認ください。運営者情報は運営者情報、免責事項は免責事項をご覧ください。

